【卒業生だより~安里ルイスさん~】
本日ご紹介するのは、安里(あさと) ルイスさんです。
ペルーにルーツを持つ安里さんは、東京農工大学の大学院を修了した後、メーカーに就職し、
現在は化学材料の開発に携わっておられます。
本日は安里さんにインタビューさせていただいた内容をご紹介します。
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―入社1年目、毎日お忙しいですか?
(安里)味の素ファインテクノ社で、パソコンや携帯などのモノづくりに必要な化学材料を開発しています。味の素は「食品メーカー」と思われる方も多いですが、香粧品、医薬品、
電子材料なども研究しています。
私自身は種々の材料を探索、配合し、優れた物性の材料とその使い方を顧客に提案してい
ます。次世代の技術を創り、新素材を世界に届けられるのが醍醐味です。
― 大学院では、どんな研究をされていましたか?支援生報告会では環境保護をテーマに発表して頂きましたね。
(安里)カシューナッツの殻(廃棄物)に含まれる特殊なオイルを原料にして、環境に優しく、包装材や接着剤にも使えるバイオマスプラスチックを合成する研究をしていました。
多くの化学メーカーで、石油原料の代替や、環境負荷の少ない材料の開発が進められている一方で、SDGs にある「つくる責任、つかう責任」について考える必要もあります。
一見、作る責任が重要視されがちですが、せっかく環境に優しい材料が開発されても、リサイクル等されずに大量廃棄されたら意味がありません。
環境に優しい材料+消費者による環境に優しい使い方、両輪が揃ってこそ環境保護に効果が出ると考えています。
―安里さんのルーツはペルーですね。
(安里)1990年代に両親が出稼ぎ労働者として来日し、その後私が生まれました。日系定住者の二世という括りをよくされます。
出稼ぎにきた日系定住者の家庭は、日本語能力が低い場合や、経済的に苦しい場合が多く、子供たちが勉強についていけなかったり、高校や大学の学費を用意できず、親世代同様に、非熟練労働者しか進路として選べない問題があります。
両親は逆境の中でも、私の将来の夢:「進学して新素材を開発し世界に届けること」を応援してくれていましたが、リーマンショックの際に職を失ってしまい、日本での進学を諦める事態も経験しました。
中学生だった当時は毎晩悲しみに暮れたことを思い出します。
帰国の準備をする中、突如、父の勤める工場が再開したニュースが入り、何とか進学の望
みを繋げることができました。
その後は一層学業に専念し、節約で絞りだした塾代や奨学金などに助けられて、大学院ま
で進むことができました。
大学に合格した時に、日系定住者の知り合いから「ありがとう」と言われることがありました。理由は、経済的に苦しい中でも進学した日系定住者というロールモデルになってくれ
たからだと言われました。
その時、私のような存在が、中高生の学習サポートや、進路のアドバイスをすることによって次世代の選択肢を広げられるに違いないと気づき、大学時代にさぽうと21の学習支援室で活動することにもつながりました。
― 理数科目や受験対策などを教えて頂き感謝しています。今後目指していることは?
(安里)学習支援室では、様々な国の出身の生徒たちと対話できました。私は、外国にルーツをもつ全ての子供たちに、日本と母国、そして第三の国々との架け橋になってほしいと
願っています。
そうすれば、ネットワークが無限に広がっていき、SDGs などの世界的な課題解決にもつながると信じています。