「しらみつぶしに民間奨学金を探した末にたどり着きました」
私の父は中国人、母は中国残留婦人二世です。
正直なところ、私の中学高校時代には、いい思い出よりも大変だった思い出の方が多かったように思います。家族皆に様々な不幸が降りかかり、「困窮」から抜け出せない状態が続きました。
また、日本で生まれ育った中国帰国者ゆえの悩みもありました。中国語が母語である両親とうまく意思疎通が図れなかったり、日本でも中国でも外国人として差別されたり、そのほか思わぬ場面で不自由を強いられたりといった経験の数々は、まだ子どもだった自分にとっては辛いものでした。
そのため、日本人への帰化手続きを試みたこともあったのですが、私だけの希望では手続きが進まず、泣く泣く帰化を断念しました。
そして、大学院進学を見据えてからは、「日本国籍が無く留学生でもないため、応募できる奨学金が見つからない」という問題に直面しました。
学部時代には、金銭面で困ることが多くありました(特に授業料や家賃の支払いにたびたび困り、退学や住む場所が無くなる不安に晒される日々を過ごしました)。
そのため、大学院では少しでも安心して研究活動に取り組みたいと、しらみつぶしに民間奨学金を探した末に、「さぽうと21」のホームページにたどり着きました。
坪井基金の募集要項を読んで「自分にも応募できる!」と知った時には、飛び上がって喜んだことを覚えています。
実際に坪井基金の支援生となった今は、お金に悩まされない事がこれほど安心感のあることなのかと、日々有り難みを実感しています。
今は、北海道東部の河川に含まれる栄養塩物質に関する研究に励んでいます。
陸地から海へと流れゆく様々な物質の中でも特にシリカに着目し、流下メカニズムの解明を試みています。この研究を通してシリカの供給量や植物プランクトンによる栄養物質の消費量などが明らかになれば、北海道の水産資源(特にカキやアサリなど)を
持続可能な形で利用・管理するためのより良い方法を明らかにできる(そのための重要な基礎情報になる)と考えています。
また野外調査のたびに、生まれ育った九州とはまるで違った北海道の大自然に圧倒されつつ、その素晴らしさに魅了されています。
修士課程修了後の進路は、民間就職を予定しています。
そして将来は、国籍、貧困、障害などの問題に苦しむ人々の問題を何とかして解決したいです。
具体的な方法は模索中なのですが、
今まで6年かけて学び研究してきた環境科学やSDGsに関する知見を活かして、持続可能な事業という形で、社会を少しでも変えたいと思っています。
それが実現できれば、さぽうと21の皆さんやその他沢山の人々に助けていただいたことに対して、自分なりの恩返しができるのではないかと考えています。
まだ社会人経験もないため、これから社会に出て学ぶべきことはとても沢山あると思いますが、
まずは目の前の研究に、最後まで楽しんで取り組むことから始めようと思います。
これからも、自分で選んだ課題の1つ1つに全力で取り組みながら、人生のビジョンを追求していきたいと考えています。